経済成長と共に進化する都市、南昌。革新的なインフラや商業施設が整備される一方で、伝統的な文化や芸術を大切に守り続けるこの街は、より豊かな街へと発展する注目のエリアです。GARDEは、2025年5月竣工予定の新たな商業施設「南昌 JOY CITY」の全館室内設計、館内コーディネートを担当し、南昌の未来を象徴する空間づくりに挑みました。
南昌JOY CITYプロジェクトのデザインを手掛けたのは、数々の中国国内外の商業施設を手掛けてきた実績を持つチーフデザイナー、大畑雄。これまでにも蘇州JOY BREEZEのデザインを担当し、今回が2つ目のJOY CITYの全館室内設計となります。今回は、大畑が南昌JOY CITYに込めたデザインの思いや挑戦について話を聞きました。
プロジェクト全体のコンセプトは「南昌を『雲』と『希望』でつなぐ空間デザイン」
大畑「南昌JOY CITYは、南昌というエリアの特性を深く掘り下げ、その魅力を最大限に引き出し、それを多くの人に感じてもらうことを目指した商業施設です。南昌市は中国の内陸部に位置する、発展途上の都市です。その歴史は古く、江南の三大名楼とされる滕王閣(とうおうかく)を有する国家的な景勝地として有名です。
今回のコンセプトは、唐代代表的詩人・王勃が詠んだ「滕王閣の序」の一説にある「青雲之志」に着想を得て、地域の文化や歴史を重視したデザインを構築しました。この詩に込められた「徳を備え、高い意識を持ち、社会や世界を豊かにする」という精神が、プロジェクト全体のストーリーの核となっています。
プロジェクトのテーマは「ラピュタ」。雲を象徴とした壮大な空間デザインを展開し、人々が集い、憩い、楽しむことのできる“理想の場所”を目指しました。
例えばはじめはコミュニティーとして訪れた南昌JOY CITYが、いつの間にか自分のお気に入りの場所になり、そして大切な人といきたい場所になる、そんな空間になればと願っています。
また、広大なモールの動線計画にも徹底的にこだわり何度もシミュレーションと分析を重ね、訪れる人々が快適に過ごせる空間を実現しています。モールは他階層や対面通路の店舗にも興味を持ってもらうことが大切なので、今回は『死角がなく、様々な位置から店舗を見渡せること』にも気を配りました。
このプロジェクトは、2021年のコロナ禍を経て中国経済が厳しい状況にある中で、地域の新たな活性化の象徴となることを目標に掲げていました。南昌JOY CITY、地域に新しい活力をもたらすランドマークとして、多くの人々に愛されることを期待します。」
デザインコンセプト:「雲」をテーマにした心躍る空間づくり
続いて、プロジェクトテーマの「ラピュタ」を象徴する特徴的なデザインについて聞きました。
大畑「各アトリウムやエントランスに明確な特徴を与えることで、それぞれがユニークな位置付けを持つよう設計しました。広いモールだと自分の現在地を把握するためにも、デザインの変化が役立ちます。
さらに、施設全体に一貫して取り入れられた雲をモチーフにしたデザインは、柔らかな形状や質感を特徴としており、訪れる人々が歩くだけで心地よさを感じられる癒しの空間を考えました。
JOY CITYは中国全土に展開するショッピングモールブランドです。開発当初はデザイン重視・コスト度外視の面もありましたが、近年はコストコントロールの為にデザイン標準化を行い、ブランドとしての統一されたデザインと施設ごとの特徴的なデザインの融合に着手しました。最新施設である三亜、厦門、南昌では、この「デザイン標準化」が適用されていますが、この”統一的と特徴的の両面を1つのコンセプトで表現する”というバランスに難しさを感じつつ、挑戦してきました。南昌JOY CITYは、その細部まで考察したデザインが、訪れる人々に特別な体験として伝わり、地域のランドマークとなって欲しいと思います。また、この施設がデザイン性維持とコスト削減を両立させた新基準施設として、JOY CITYモールの成功事例となる事を願っています。」
デザイナー大畑メッセージ:愛される空間を目指して
私たちが目指すデザインは、単なる建築物ではありません。それは、地域の人々にとって心の拠り所となり、訪れる方々が日常を離れてリフレッシュできるような空間です。コロナ禍を経て、多くの人々が心地よく過ごせる場所を求めるようになった今、南昌JOY CITYは地域に寄り添いながら、人々の心に残る特別な存在となることを目指して設計されました。「ここで過ごす時間が癒しと活力をもたらすものになるよう、細部に至るまで徹底的にこだわりました。
私たちデザイナーは、常に時代や地域性に応じて進化し続ける責任があります。
JOY CITYのようなプロジェクトを通じて、人々の暮らしをより豊かにする空間をこれからも創造していきたいと考えています。
担当デザイナー
大畑 雄
デザイン事業部 デザイン課 チーフデザイナー
中国にて、長期に渡り大型商業施設の設計や現場監修に携わった後、香港事務所、アジアパシフィック事業部に所属。中国の大型商業施設・大悦城や、マレーシアのPARKSONデパートメントストアの環境デザイン、天河城の最新商業施設ブランド・粤海天地等、幅広く実績を積み上げ、概念設計から設計監修まで携わっている。2021年より東京本社に戻り、引き続き中国物件を中心に従事している。
施設概要
名称:南昌JOYCITY
所在地:南昌市西湖区朝阳新城,云锦路以北,抚生路以西,金环路以南
建物竣工予定時期:2025年5月予定
事業主: 大悦城控股(Joy City Property)
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