MUSE DESIGN AWARDS2022でGOLDを獲得したカンデオホテルズ京都烏丸六角。その内装デザインを手掛けるなど、若手デザイナーとして着実に実力と実践をつけているフランチェスコ・リストリと錦織杏奈。
今回はカンデオホテルズ京都烏丸六角のdesignを中心にdesignに興味を持ったきっかけやプライベートに至るまで多角的に掘り下げてみました。
※「フランチェスコ・リストリ」以下「フランチェスコ」、「錦織杏奈」以下「錦織」
◆先ずは、お二人のバックグラウンドについて教えてください。
フランチェスコ) フィレンツェ大学にて建築を学びました。卒業後はイタリアで住宅やリテールの設計、歴史的建造物の修復に数多く携わりましたね。その中で、新築設計にも興味が湧きはじめイタリア同様、歴史的建築物が多くの存在する日本で建築に携わりたいと考え。一念発起、日本に移住することを決めました。
錦織) 元々は土木工学を専攻していました。が、英国の”TATE MODERN”に出会ったことをきかっけに歴史的建造物のリノベーションに興味を持ちました。そこで、イギリスでインテリアデザインを学ぶことにしました。
◆GARDE入社後に手掛けられた物件について教えてください。
フランチェスコ) 2014年の来日後はMetLife東京ガーデンテラス・オリナスタワー、カンデオホテルズ京都烏丸六角、Kosugi 3rd Avenue武蔵小杉、HOTEL ARU KYOTO三条木屋町など日本国内やアジアのオフィス、ホスピタリティー、レジデンシャル、商業施設、百貨店など幅広いジャンルのプロジェクトに参加しています。現在は、オフィスデザインを中心にデザインをしています。
錦織) 入社後は、ホテル、リテール、フードホールなど様々なジャンルのインテリアデザインを手掛けました。例えば、セルリアンタワー東急ホテル、カンデオホテルズ京都烏丸六角、US HOTELなどホスピタリティデザインを中心に様々な物件のデザインを担当しています。
◆カンデオホテルズ京都烏丸六角のdesignを手掛けるにあたり、心掛けたことは?
フランチェスコ) 京都は良い意味で町内会のアイデンティティーや繋がりが強く、そこでコミュニティーが形成されている、文化が育まれていると感じました。それはとても貴重で継続していくものだと思いましたので、周囲の方々との調和を図りながら、ホテルのデザインが優しく町に溶け込むように努めました。
錦織) 最初に見学した町家はとても暗かったのですが、ラウンジと言う性質上、お客様をお出迎えする場所として、誰もが入りたくなる明るい空間作りを心掛けました。一方で、歴史的建造物ということもあり梁に穴を空けてはいけないなどの、デザインを行う上で難しい規制が多くありました。そんな中で「カンデオらしさ」とどう融合していくか、デザインでどう表現していくかを考えながら作業を行いました。
◆インスピレーションを受けたコト、モノは?
フランチェスコ) カンデオホテルと言えば、女性らしさがデザインの鍵だと思います。そのため、女性らしい色味を始めとし、柔らかくて上品なイメージが伝わる最良な素材をピックアップし、それを嫌味なく上手にデザインに取り入れることに務めました。
錦織) 「カンデオらしさ」のコンセプトが「煌びやか」だったため、「煌びやか」の象徴としてジュエリーなどからインスピレーションを受けました。
◆designのポイント、ここは絶対に見て欲しいというところは?
フランチェスコ) 中庭は、歴史溢れる町家の香りと、優しくてモダンなデザイン性を持つ新棟が融合するポイントで且つ、カンデオホテルズ京都烏丸六角においても魅力的なスポットと言えます。是非、見て感じて欲しいですね。
錦織) 現在BARとして使われている部屋の構造がおもしろいので、是非見て欲しいですね。
◆MUSE DESIGN AWARDSなどデザインアワードの受賞を通し、デザインが高いで評価を受けています。評価されたと思うポイントは?
フランチェスコ) 歴史溢れる建造物と新たな建造物との優しい溶け込みが評価のポイントになっているのではないかと考えています。
錦織) 町家自体の歴史的価値とそれを活かした新棟とのつながりを持った新旧が融合したデザインがポイントだと思います。
◆カンデオホテルズ京都烏丸六角のdesignを通し実になったことは?
フランチェスコ) 使用目的によっては、手付かず傾向にある歴史的建造物と現代の建造物を融合させ全く新しい建造物に生まれ変わらせるというプロジェクトに携わることができたことは、とても刺激的で、今後のデザインにおいて素晴らしい経験になったと考えています。
錦織) 今まで経験した建物よりも規制が多かったので、自分の思い描くデザインをどう形にしていくのか考えることは、とても勉強になりました。具体的には、建築物について事前に調べて「見せる場所」を考えながらデザインしたことがあげられますね。
◆また、それを今後のdesignにおいてどの様に活かしていきたいですか?
フランチェスコ) 今後のプロジェクトでもこのように、周りの歴史やコミュニティーに配慮した上でデザインしていきたいと思います。それは、新規物件、改装、改修に関わらず、既にその場所で育まれてきた歴史や文化、昔からある周囲とのつながりを大切にしながら、次世代に伝えるのが建築家/デザイナーの仕事だと考えているので…。
錦織) デザインする際、実際の施工方法や綺麗な収まりを考えながら設計することですね。
◆今後、携わりたい、やってみたいデザインやプロジェクト、(国内外どちらでも)は?
フランチェスコ) 今回の経験をベースに、履歴的建造物を現代の技術や方法を最大限活用し、オフィス環境として生まれ変わらせたい?改修?したいと思っています。
錦織) 機会があれば、再び履歴的建造物のリノベーションをデザインしてみたいです。
ここからはプライベートについて・・・
◆納品間近は結構、スケジュールがハードになるかと思います。そんな時でも自分を失わないために行っていることなどありますか?
フランチェスコ) 特別、何もやっていません。納品が近くなる程、自然に生産効率が上がる、そんな体質です(笑)。
錦織) 睡眠時間を確保することですね。
◆休みの日の過ごし方は?
フランチェスコ) 家族と都会を離れ、自然にふれることです。
錦織) スクーリング、課題作成、猫と遊ぶ、旦那さんとおいしいごはんを食べに行くことです!
◆designと心身のバランスはとても密接かと思います。バランスを保つためのおススメな方法は?
フランチェスコ) 私の場合、オフィスを出た瞬間、仕事の事を忘れ、私事モードに切り替えるようにしています!!
錦織) 美味しいものを食べてよく寝ることです!
◆designに携わるにあたり無くしてはいけないモノは何だと思いますか?
フランチェスコ) モチベーションですね。
錦織) 諦めない心です。
◆100年、200年残り続ける建築designを通し伝えたいことは?
フランチェスコ) デザインの良さは歴史を大切にした上で分かると思います。言い換えれば、歴史をつなぐことで建築デザインもつながっていく。それを伝えていきたいです。
錦織) 端的に言えば、良いデザインは時代を問わず評価されると思います。(笑)
◆これからdesignに携わりたい、生業にしたいと考えられている方々に向けアドバイスを。
フランチェスコ) 机上の勉強だけでなく、デザインは多感覚の体験です。常に目の前に起こる事に対して好奇心を持つ事と、デザインだけに限らず様々なモノやコトに幅広く興味や好奇心を持つ事を心掛けて下さい!
錦織) 実際に体験することが大切だと思います!
◆自身のアピールポイントを教えて下さい!
フランチェスコ) 国際的なマインドセットを持ち、更に様々な見方や考え、アイデアを組み込む事が好きなところですね。
錦織) INFP-Tタイプなところです!
日々のライフワークバランスを上手に保ちながら、同時にデザインの大切さを感じつつ、センスやスキルアップに努める2人。今後、世界中で2人の描いたデザインが多くの人々の目や心を潤わせていくことに是非、ご期待ください!
◆カンデオホテルズ京都烏丸六角
中庭
エントランス
通り土間
客室
■デザイナープロフィール
フランチェスコ・リストリ Francesco Ristori
国際デザイン事業本部 オフィス事業部 アーキテクト・デザイナー
フィレンツェ大学にて建築を学ぶ。卒業後はイタリアで住宅やリテールの設計、歴史的建造物の修復に数多く携わる。2014年の来日後はMetLife東京ガーデンテラス・オリナスタワー、HOTEL ARU KYOTO、Kosugi 3rd Avenue武蔵小杉など日本国内やアジアのオフィス、ホスピタリティー、レジデンシャル、商業施設、百貨店など幅広くプロジェクトに参加。
錦織 杏奈 Anna Nishigori
デザイン事業本部 大型デザイン課 デザイナー
英国で内装建築を学びMAを取得後、2017年GARDEに入社。京都カンデオホテル、大阪新規ホテルはコンセプト立案、基本設計、実施設計まで携わる。英国で学んだ内装建築技術を生かしホスピタリティデザインを中心に国内外問わず様々なプロジェクトに参画している。