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アジアのウェルネス・リトリート3選

世界的なパンデミックは、さまざまな形で私たちの生活に大きな影響を与えていますが、この状況下で注目を集める産業のひとつにウェルネスがあります。多くの人が緊張から解放され癒しを求める中、健康を維持することや免疫力を高めることへの関心が高まり、ウェルネス・リトリートの需要はますます大きくなっています。

リラックス方法は様々ですが、心と体のリラックスには、贅沢なウェルネス・リトリートに勝るものはありません。とりわけ、アジアのラグジュアリー・ヘルス・リゾートは今、人々が健やかさを取り戻すためのプログラムの開発に力を入れています。海にも山にも、魅力的なディスティネーションはありますが、それぞれに相応しい過ごし方をご紹介します。

フィリピン・ネイパラドで人生をリセット

マニラから飛行機で1時間、シアルガオ島の東南端に位置するネイパラド。 2つの異なる海洋生態系の間に位置するこの“隠れ家”では、太平洋を見下ろす手つかずのビーチで静かな時間を過ごすことができます。

プールサイドでは、このサンクチュアリに点在するハンギングポッドで日光浴をするなど、プライベートベイで一日中寛げます。朝はマングローブと海にある2つのパゴダで過ごし、午後はトランポリンで遊び、夜は屋外のバーで過ごすのもいいでしょう。手織りの調度品で飾られたスパで受けるリラクゼーショントリートメントは、特に雰囲気のある夜がお勧めです。

ネイパラドでは、ボートハウス・パビリオンでのウェルネス・トリートメントが特に有名で、そこでは、屋外でのヨガ・メディテーションも行っています。こちらにはジムエリアもあり、癒し効果が高いと言われているフィリピンの伝統的なマッサージ、「ヒロット」の施術も受けられます。ネイパラドは、伝統的な建築物、現代的なインテリアデザイン、息を呑むような大自然が見事に調和しており、屋外で過ごす時間とサステナビリティによって、最高のラグジュアリーを提供しています。

チバソムのホリスティック・リトリート、タイ

アジアのラグジュアリー・ウェルネス・デスティネーションとして数々の賞を受賞しているチバソムは、モダンなインテリアデザインが特徴で、伝統的なタイのパビリオンを含む54の洗練された客室で本格的な体験ができます。

タイ湾沿いに位置する、ホアヒンにある約28,000㎡もの緑に囲まれたチバソムには、温かみのある色調と天然素材を使用し、新しく改装されたオーシャンルームとスイートルームがあります。各ヴィラには、ダイニングエリア、ドレッシングルーム、ミニパントリー、2つのトイレが完備されオイルバーナーの香り、バスルームのアメニティ、ベッドルームのリネンや枕など、お客様の好みに合わせてカスタマイズされています。

またアジアでも有数のウェルネスプログラムを提供していることで知られており、自然の中でゆったりと過ごしながら、世界最高の医師によるホリスティック・ヒーリング・プログラムが受けられます。 デトックス、ヨガ、フィットネス、フィジオセラピー、ウエイトマネージメントなどのウェルネスプログラムは、ひとりひとりの状態に合わせて行われるので、効果を感じやすいことが人気の理由です。

インドネシア、コモ・シャンバラ・エステートでのリモートヒーリング

ウブドの緑豊かな熱帯雨林に位置するコモ・シャンバラ・エステートは、「変化のための贅沢なリトリート」として広く知られています。癒しとライフスタイルの変化によってポジティブになれる、最先端のレジデンス・スタイルの宿泊施設です。

壮大な熱帯ジャングルの中で、ライフコーチ、エネルギーヒーラー、ヨガマスター、栄養士など、高度な訓練を受けたウェルネスの専門家による癒しを体験し、自然とのつながりを感じることで、健康な心と体を手に入れることができます。

ヴィラとスイートは、約93,000㎡の敷地内に配置され、とても穏やかで落ち着いた環境です。各部屋には天然木の家具が配され、屋外テラスと半屋外のバスルームがあります。屋外プールでくつろいだり、ガイド付きツアーで楽園を探検したり、マッサージセラピーやその他のウェルネス・トリートメントが受けられるなど、心に深く刻まれるような体験を提供しています。

出典:
https://www.naypaladhideaway.com/
https://www.chivasom.com/
https://www.comohotels.com/en/comoshambhalaestate

いずれは訪れたいユネスコ文化遺産

世界的なパンデミックの影響で、“死ぬまでにやっておきたいことリスト”はしばらくお休みしていました。今回の経験により私たちは、環境に配慮し、文化遺産を保護することの大切さを学びました。私たちのみならず次世代の人たちが様々なことを体験し学ぶ旅ができるよう、この状況が一日も早く収束し、国境を越えて自由に旅することを心待ちにしています。

ユネスコ遺産には、文化的、歴史的価値の高い建築物がたくさんあります。自由に旅ができるようになったら、環境にも配慮しつつ、思う存分楽しんでみてはいかがでしょうか。

タージマハル(インド)

インドの豊かな歴史を象徴するムガール建築の粋を集めたアイボリーホワイトの霊廟は、シャー・ジャハンが最愛の妻ムムターズ・マハルの死を悼んで建てたまさに“愛のモニュメント”です。このモニュメントは、緑豊かな庭園、美しいプール、噴水に囲まれた42エーカーの美しく広大な敷地にそびえ立っています。

インド、イスラム、ペルシャの建築様式が融合したこの魅惑的なモニュメントを設計したのは、ラホール出身でシャー・ジャハンの宮廷建築家として活躍していたウスタッド・アフマド。インドの有名な詩人、ラビンドラナート・タゴールは、世界で最も魅力的な建築物のひとつであることを称えて、「時の頬をつたう孤独な涙」と表現しています。 

清水寺 (日本)

京都で最も有名な寺院のひとつである清水寺は、「音羽の滝」の清水に由来しています。最大の特徴である168本の柱で構成された木造の舞台からは、四季折々の京都の街並みを一望できます。

この象徴的な本堂が有する、山に張り出した木造の建物は「清水の舞台」と呼ばれています。拝殿の下は、複雑に編み込まれた木の梁で支えられています。また清水寺の見どころのひとつである子安塔は、桃山時代の建築様式を取り入れた三重塔で、当初は聖典や遺物を納めるために設計されたと言われています。

ポタラ宮 (チベット)

金色の屋根が街を見下ろし、谷底から300メートル以上の高さにそびえ立つ歴史的建造物であるポタラ宮は、チベット建築の頂点を象徴しています。ラサ北西部の赤い丘に、36万平方メートルを越える広大な敷地に宮殿、城、寺院を有するこの壮大な建築遺産は、最も高い標高に位置する、大規模でそして素晴らしく保存状態のよい、非常に稀有な建築物です。

本殿は、400m× 350m、建築面積にしておよそ1万3000平方メートル、傾斜した石壁は厚さ3〜5メートルの粘土で覆われています。また地震に備えて、基礎部分には溶かした銅を注入するなど、堅強につくられています。

アンコール・ワット(カンボジア)

ピラミッドと同心円状の回廊からなる古典的なクメール建築の代表格であるアンコール・ワットは、カンボジアの森の奥深くにあり、その壮大な尖塔はカンボジアの誇りです。

アンコール・ワットは、400平方キロメートル以上の広大な遺跡群の中に鎮座し、その数百の遺跡群では、1.5トンの石材約1,000万個が使用されており、エジプトのピラミッドよりも多くの石が使われています。

蓮の形をした象徴的な高層塔、広大な壁、無限の回廊には、豪華な彫刻が施されています。これらの彫刻は、アンコール・ワットの歴史的な出来事や民間伝承の物語を表現しています。

世界遺産は、人類の創造力と文化的意義が融合した世界的な傑作であると同時に、観光業を盛んにし地域経済も活性化させるものでもあるといえるでしょう。

出典:

https://whc.unesco.org/en/list/252/
https://en.wikipedia.org/wiki/Kiyomizu-dera
https://en.wikipedia.org/wiki/Potala_Palace
https://www.britannica.com/place/Angkor

アジア: 観光業界における グリーンイニシアチブ

贅沢な旅行とサステナビリティは相反するコンセプトのように思われますが、アジアの多くのホテルがその開発や運営においてサステナブルで環境にやさしい活動を推進しており、今や環境に配慮した観光がホスピタリティ業界の主流となっています。実際、国連世界観光機関の調査においても、国境を越える旅行によって排出される二酸化炭素は全世界排出量の5%であると報告されています。アジアの素晴らしいホテルやリゾートでは、エコロジーを基本戦略のひとつに掲げ、森林再生プログラムやエコリゾート、エネルギー効率の高い設備の導入などに積極的に取り組んでおり、二酸化炭素排出量を削減しながら快適なサービスを提供しています。

1. マリーナベイ・サンズ―シンガポール

シンガポール随一のグリーンマークビルとして認定されている、統合型ラグジュアリーホテルリゾート。3棟からなる55階建てのタワーは、頭上に公園が広がる屋根でつながっており、年間およそ4,500万人が訪れています。

1,880万ドルを費やして導入したインテリジェントビル管理システムにより、水とエネルギーを自動的に資源として再利用。エレベーターは自動充電により従来のものよりエネルギー消費量を40%抑えることが可能になり、ホテルの象徴的なインフィニティプールには節水システムが採用され、2,561室ある全ての客室にエネルギー効率のよいLED電球を使用し、省エネ型の冷水式空調システムが設置されています。またサンズエクスポとコンベンションセンターの「グリーンミーティング」スペースでは、紙資源、人件費、輸送費を削減するため、電子販売ツール、リサイクル可能なオフィス用品、使い捨てではない食器やガラス製品などを使用しています。

持続可能で資源効率に優れ、気候変動に強い国を構築するというシンガポールの指針を全面的に支持するマリーナベイ・サンズは、2020年の取り組みにおいては「気候変動への対応」「水・廃棄物の循環型社会」「持続可能な食と文化」「キャパシティの構築」の5つに焦点を合わせました。これらは企業としてのサステナビリティに対する積極的な取り組みと二酸化炭素排出量削減という使命を掲げながらも、顧客には最高のおもてなしを提供するというコミットメントでもあります。

2. グランドハイアット―ジャカルタ、インドネシア

グランドハイアットは、緑豊かな熱帯樹に囲まれた環境にやさしい5つ星ホテル。気候変動や環境問題に対処するための持続可能な取り組みとして、45枚もの太陽光発電パネルを設置したパイオニア的存在です。他にもエネルギー効率の良いLED電球に変え、各所にモーションセンサー照明を設置するなど、環境に配慮した省エネ活動を推進しています。

ソーラーパネルは毎日最大20室の客室へ電力を供給し、30年間で400トンの二酸化炭素排出量を削減しています。これは170,000リットルの車両用ガソリンに相当します。使い捨てプラスティックの使用量なども断続的に削減し、環境にやさしい製品に変更しています。またデータ監視システム「エコトラック」の導入により、ハイアットが経営する世界中のフルサービスホテルのエネルギーと水の使用量、廃棄物や温室効果ガスの排出量を可視化し、環境に対する問題意識を喚起しています。

2021年には気候変動、水の管理、廃棄物、また地域社会への継続的な取り組み戦略を見直し、グランドハイアットは常に独自の環境に配慮した空間をゲストに提供しながら、サステナブルな未来を届ける事にコミットしています。

3. ソネバキリ―タイ

自然の熱帯雨林と離島に囲まれた環境に優しくラグジュアリーな5つ星リゾート“ソネバキリ”は、「スローライフ」の哲学である、サステナブル、ローカル、オーガニック、ウェルネス、ラーニング、インスピレーション、楽しさ、体験を掲げ、いわばラグジュアリーであると同時に持続可能なツーリズムの見本のような存在です。持続可能性を優先する100%カーボンニュートラルなこのリゾートは、タイに50万本以上の木を植え、300エーカー以上の生物多様性エリアを生み出し、二酸化炭素排出量を25万トン以上削減。また食事も、リゾートのオーガニックガーデンで自然に育てられた食材を使った料理を提供しています。

積極的なリサイクル、有機農業、スマートコンポスト、水のリサイクルシステムを通して、環境、社会的、さらには経済的にもポジティブな影響を与えるグリーンイニシアチブプロジェクトを段階的に推し進めています。2020年2月には、エコセントロと水のボトリング工場を開設。提供される全ての飲料水が濾過され、ミネラル、アルカリ化され、再利用可能なガラス瓶に瓶詰めされます。

ソネバキリはカーボンニュートラルを実現し、統合的で責任ある観光業の運営を主要な経営戦略で約束しています。それは自然環境を保護しながら、ゲストにはここでしかできない体験を提供することに他なりません。

4. ザ ダタイ ランカウイ―マレーシア

1000万年前の熱帯雨林の中心に位置する豪華なエコツーリズム、ザ ダタイ ランカウイはEarthCheck Eco認証プログラムに世界で初めて参加しました。

この認証プログラムは、持続可能な観光組織が、環境に与える影響を軽減し、地域コミュニティを最大限にサポートしながら5つ星のリゾートにふさわしい静かな空間と豪華な設備を備えたゲストに最上級の体験を提供する事を目的としています。

環境にやさしい取り組みとして、パーマ カルチャー ガーデンを設置したほか、グライハウストレイルでは、畑から食卓まで持続可能で新鮮な食糧生産を体験できるセルフガイドツアーを実施。オーガニックウェルスセンターには、水牛の糞尿や生ゴミを分解してバイオ肥料を生成する有機ワームファームを備えており、コンポストでは毎日300〜700kgの食品廃棄物を堆肥化しています。また下水処理場からの水を湿地帯にポンプで送りこみ、植物によって浄化するろ過システムを使用しています。ザ ダタイ ランカウイは、長年にわた持続可能性への取り組みにより、地域の環境を保護しながら、世界中から訪れる旅行者に国際的にも質の高いサービスを提供し続けてきました。

5. ソンサー プライベート アイランド―カンボジア

手つかずの自然が満喫できるコ・ロン島のエコ リュクスリゾートであるソンサーは、自然環境からインスピレーションを受けたリゾートの美学と、リサイクル、堆肥化、持続可能な地元の素材を使った建築など、環境に優しい様々な取り組みに誇りを持っています。

建設資材の輸送時に排出される二酸化炭素を最小限に抑えるため、ヴィラの構造材に地元の砂岩や、近くの河口で解体された船の木材を再利用したり、リゾート内の家具は地元のビーチに流れついた、状態の良い流木から作られています。また、オーダーメイドでキャンバスに描かれ、リサイクルされた漁船の木材で額装されたアート作品もいくつもあります。

ソンサー プライベート アイランドは、持続可能な観光とホスピタリティを提供することにおいて一切妥協することなく、ここでしか体験できない環境を提供しています。

出典

https://www.unwto.org/news/tourisms-carbon-emissions-measured-in-landmark-report-launched-at-cop25

https://www.marinabaysands.com/content/dam/singapore/marinabaysands/master/main/home/environmental-sustainability/commitments/MBS-Sustainability-Highlights-Report-2019.pdf

https://www.ibcsd.or.id/ibcsd-events/sustainable-business-award-2017/

https://green-hotel.org/2015/09/11/a-luxury-eco-resort-in-thailand-2/

https://sg.asiatatler.com/life/eco-friendly-malaysian-hotels-on-our-travel-list-this-year

https://www.songsaa-privateisland.com/en/blog/2019/06/17/design/the-sustainable-design-of-song-saa/73-16/

https://soneva.com/soneva-jani/soneva-jani-chapter-two

中国: プロジェクト特集: 天目里 杭州 (OōEli Art Park, Hangzhou)

昨年、ピューリッツァー賞受賞者である世界的建築家レンゾ・ピアノの手により中国浙江省杭州市に誕生した、約23万平方メートルにも及ぶ広大な敷地面積を誇る象徴的な総合アートパーク、天目里(OōEli Art Park)についてご紹介します。

オフィス、美術館、アートセンター、ショーフィールド、デザインホテル、アートコマースなどを包括するこの壮大なプロジェクトは、レンゾ・ピアノ、JNBY社、GOA社の3者の共同開発によるものです。とりわけGOA社はパーク全体のエグゼクティブ・デザイナーを務め、7年以上の歳月を費やして、広範囲にわたるプロジェクトを組織力と技術力で牽引してきました。

デザイン・コンセプトのポイント

天目里は、「空間」と「コミュニケーション」をキーワードに、エリア内で様々な活動が同時に行えて、また芸術鑑賞的な意味でもオアシスのようにくつろげる「都市の憩いの場」をコンセプトにつくられました。 当初、レンゾ・ピアノはこのプロジェクトを、やわらかい芯をしっかりと果肉で包んだリンゴのような一つの固体として考えていましたが、予定していた11階建てから9階建てに高さを低くしたり、7階と8階のテラスを後退させることで、隅々まで燦燦と日差しが降り注ぎ、風が吹き抜ける広場へとプランを変更しました。

動線においては、中庭を囲む4つの場所に8台の乗り換え用エレベーターを設置。利用者はまず地下駐車場から地上に出て、中庭を通ってオフィスビルに入らなければなりません。ガラスのエレベーターがゆっくりと地上に上がってくると、公園の最大の見どころである中央広場に広がる豊かな自然が迎えてくれます。また季節ごとに様々なアーティストを招いて、エレベーター内でも音楽やアートを鑑賞できるような仕掛けで、来場者を楽しませます。

ベールを脱いだグリーン・コア

天目里が誇る「グリーン・コア」。地上に広がる中庭、青々と伸びる草木、太陽光を反射させるプール、テラスに並ぶ植木鉢、屋上のティーガーデンなど、いくつもの高さの異なるグリーンを組み合わせた非常に立体的な構造になっています。植物景観エリアは、アメリカの植物生態学のエキスパートであるポール・ケップハートのデザインによるもの。この緑の景観は、地下から地上へと広がり、建物の外壁を伝って屋上へと上っていきます。また5番目のファサードとして、屋上には杭州の代表的な樹木である緑茶の木が植えられています。この茶園のために選ばれた龍井43号と安吉白茶は自然豊かな場所でも都市部でも育てられる非常に適応力の高い品種で、自然と都市の共存を表しています。

出典: 
https://www.newsbreak.com/news/2139362118784/oeli-art-park-renzo-piano-building-workshop

インテリアアーキテクト、ナターシャ・アッシャーが語るサステナビリティの秘訣

NUDE designの創設者兼ディレクターであるナターシャ・アッシャーは、アジアのホスピタリティ業界や不動産業界の大手企業のデザインを手掛けてきました。香港出身で、これまで数々の賞を受賞してきたインテリアアーキテクトのナターシャが、自身のプロジェクトにおいていかにサステナビリティを実現しているのか、その秘訣を語ってくれました。

「一から家を建てる際には、廃水の再利用、空気循環、太陽光発電装置、効率的な冷暖房システムなど、廃棄物管理のシステムづくりをお勧めします。リサイクルされた製品は、コストが高かったり選択肢が限られている場合も多いので、綿、麻、亜麻、リサイクルガラス、セラミックや粘土のタイル、本革など、二酸化炭素排出量が少なく、有害物質の発生が少ない天然素材を使うのが最適です。」

またエネルギー管理においては、家やビルの窓を二重窓や三重窓にして、温度を一定に保つことでエネルギーの無駄を省くことを提案しています。さらに、省エネ機能付きのエアコンや空気循環用のシーリングファンの設置や、オイルラジエーターで室内を暖めるなど、シンプルで実現しやすい方法はいくつもあります。

照明は発熱量が少なく寿命の長いLED電球を使用します。しかし、電球自体はリサイクルできますが、LED内蔵型の照明器具は電球が切れても交換ができず廃棄することになってしまうので注意が必要です。

サステナビリティを実現する上で、廃棄物管理は非常に重要なポイントなので、どのプロジェクトにおいてもまず廃棄物削減プランを考えて、それをベースに全体を設計するそうです。例えば天然石や決まったサイズに加工された天然素材を使用する場合には、サイズやパターンの比率を緻密に計算して、最も効率的に無駄を出さないようにするといったように。

場合によってはヴィンテージの家具を再利用したり、クライアントにとって歴史的価値や思い入れの深いアンティーク家具を使用するのも好きだと言うナターシャ。専門的な視点だけでなく個人的な嗜好を取り入れることも時に必要だと考えています。一方でさほど大掛かりではない改修工事の際には、作り付けの照明器具で破損もなく特別な仕様のものでなければ、そのまま使用して廃棄物や不要なコストを抑えるケースもあります。

環境を守ることとサステナビリティを何より重要だと考えるナターシャは、食材選びから洋服、一般消費財など身の回りのあらゆることにおいてその姿勢を貫いています。「これはもはや個人レベルの問題ではなく、サステナビリティと環境保全を推し進めるためには、政府が旗を振らなければなりません。私たちはコロナによって、コミュニティが世界に与える影響の大きさを思い知らされました。環境問題は、決して他人事ではありません。本当に悲惨な未来が現実のものにならないように、今こそ真剣に取り組みましょう。」と、力強く締めくくりました。

Photo Credits: Lusher Photography

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