GARDE Galleryにて、野生、身体、時空をモチーフにその境界線上で揺れ動く感情や衝動を提示するアーティスト上村江里の個展「Picking up My Bones」を開催しました。(期間:2025年1月24日(金)から2月7日(金)まで)
今回、上村江里さんに作品への想いや今回の個展開催について、お話を伺いました。
2016年から続くシリーズで今回の個展のタイトルでもある「Picking Up My Bones」は、〈自分の骨を拾う〉という意味で【〝過去〟の断片の中から必要なものを〝今〟選び〝未来〟を作る】というテーマを持っています。
本展では、和紙や羊毛、押し花など多様な素材を用いた作品が展示され、時間の蓄積とその再構築を通して、新たな価値を生み出す上村さんの視点が鮮やかに表現されています。
時間の蓄積と再構築──『Picking Up My Bones』の世界
「このシリーズは骨を過去の象徴として登場させ、それらの中から自分にとって必要なものを今選び、未来を作っていくというコンセプトで制作しています。今回の作品の中には、切り取ればただのゴミのように見えるものもありますが、それらのパーツを自ら選び、作品として意味を持たせることで、新たな価値を提示したいと考えています。」
多様な素材を駆使した表現
今回の展示作品の中には、和紙職人と共に制作した和紙を用いた作品もあります。これまではキャンバスや既製の紙に作品を描かれていましたが、「もっと作品の土台から関わりたい」との思いから、素材の選定から制作に関わるようになったということです。
「自分が和紙に混ぜたい材料を持って、工房に行きました。
水の中に材料を入れたり、職人さんが漉いた和紙の上に私が材料を乗せて、またその上に漉きたての和紙で挟んで接着させたり。市販で欲しい画材が見つからないなら自分で作ろうと思いました。」
また、本展ではアーティストにとって初の試みとなる陶芸作品も発表されました。手の形をした立体作品については、石膏原型からシリコン型を取り、陶器として焼き上げるまでに工程を重ねたそうです。ご自分の手の形を使用しているそうで、繊細さと同時に力強さと美しさを感じられる作品となっています。
手の作品の土台の文字〈Rock Bottom〉は〝地球の底〟のニュアンスを含む「底辺」という意味で、一番低い場所に触れている作品です。
「最低な場所にはきっと誰も行きたくないし関わりたくないけれど、そこにもその場所でしか体験出来ないものや気付けない事があって、その経験をどう次に活かすかは自分次第だと思います。蝶々は私の作品によく登場するモチーフの一つで、楽園の象徴です。底の部分や暗く見える作品にも蝶を登場させることにより希望を持たせています。」
人間としての【野生】とは
上村さんが作品制作を続ける上で、重要なテーマが〝野生〟です。
「元々私達が生物として持っている野生的な部分に興味があります。例えば直感や五感もそうだと思いますが、そのように生物として備わっている能力を積極的に使うことで自分自身とより繋がることが出来ると思っています。
例えば私達が普段使う言葉は、自分自身で選択しているようで、実は誰かから影響を受けたものも多いです。それが本当に自分の言葉なのか、もしくは社会や常識から無意識で言わされている言葉なのか、自分の中で自覚的でありたいと思っています。
本当の自分自身を生きるとはどういう事なのか。
元々それぞれが持っている野生的な個性を活かせたら、もっと面白い世界になるのではないかと考えています。」
この考え方は、対話をテーマにしたシリーズ作品にも反映されています。下記の作品では、〝他者との対話ではなく、自分自身との対話の重要性〟を表現しているそうです。
それは上村さんの中で、外部でのコミュニケーションの根本は自己との関係性という考えがあり、自分と対話をしていく必要性を語ります。
「自分の気持ちを最初に感じてあげられるのは自分なので、生まれた感情は無視しないでまずは認めてあげて欲しいです。喜怒哀楽どれも優劣はないと思っています。」
今後の展望について
これから挑戦してみたい事を伺うと、
「今回初めて陶芸作品を展示しましたが、搬入の時に人物の立体を床置きしていた状態にも魅力を感じたので今後は床や壁に立体を直接展示して、より空間全体を使った展示をしてみたいです。」とのこと。
また、今後の目標については「とにかく作品を作り続けること」と語ります。
『Picking Up My Bones』展は、過去と未来、素材と表現、自分と他者──さまざまな境界を行き来しながら、新たな価値を生み出すアーティスト上村江里の世界を体感できる貴重な機会となっています。
上村江里 / ERI UEMURA
1986年 広島県生まれ
2010年 尾道市立大学 芸術文化学部 油画 卒業
2010-11年 渡英 ロンドン滞在
2014年 東京藝術大学 大学院修士課程 美術研究科 油画 修了
主な展示
2012年 グループ展「大学絵画」アキバタマビ21、3331gallery、東京
2012年 グループ展「上村江里・宇都宮恵・升谷真木子のアトリエ」、東京藝術大学 大学会館、東京
2013年 個展 「Life Drawing」Ouchi gallery、NY
2014年 「art award tokyo marunouchi 2014」参加、行幸地下ギャラリー、東京
2014年 個展「Kiss」JIKKA、東京
2014年 グループ展「三越 × 東京藝術大学 夏の芸術祭2014 次世代を担う若手作品展」日本橋三越本店、東京
2014年 「シブカル祭 2014」参加、パルコミュージアム、渋谷PARCO、東京
2014年 「TOKYO DESIGNERS WEEK・SHOP ART WALK」参加、Pretty Ballerinas AOYAMA、東京
2015年 個展「ERI UEMURA」eatable 、東京
2015年 グループ展「In Focus6 卒業生の現在」MOU尾道市立大学美術館、広島
2018年 zine fair 参加、湿地venue、台北
2023年 グループ展「ART KAMIYAMA」麻生邸、東京
INSTAGRAM: https://www.instagram.com/eri_uemura
上村江里個展「Picking up My Bones」開催概要
会期:2025年1月24日(金)~2月7日(金)※日祝休
時間:11:00~18:00
会場:GARDE Gallery(東京都港区南青山5-2-1 NBF ALLIANCEビル4F)
入場:無料
作品販売予定URL https://www.art-adf.jp/