強度、耐久性、多用途性の観点から見ても非常に優秀な素材として認知されている「竹」は長く日本産業を支える重要な資材でもありました。
環境負荷の少ない素材として世界から注目を集める竹の有益な活用事例についてお伝えしていきます。
竹が建築素材に最適なわけ
竹材と聞くと東南アジアの竹建築を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際に竹は、温暖湿潤な東南アジアを中心に生育する植物です。そのため東南アジアを中心に作られる美しい竹建築は、その土地の歴史を感じさせながらも近代的な要素を見事に取り込んでいます。
タイ北部のチェンマイにあるパンヤデンインターナショナルスクールに作られバンブースポーツホールは最適な例のひとつです。そのモダンで有機的なデザインとサステナビリティに基づいた建築から竣工から7年経った今でも多くのファンを魅了しています。
近代的な要素を残しつつ、土や竹でできた周辺校舎や自然環境との調和が設計条件であったこの施設では、建築素材に竹を使用することで上記の課題をクリアしながら二酸化炭素排出量も抑え、よりグリーンな施設を生み出すことに成功しています。
継承され続ける日本の伝統工芸品
日本でも一部地域を除き幅広く育ってきた竹は、長年にわたり建築資材や生活用品、工芸品、竹炭などに利用されてきました。しかし近年では安価な代替資材の誕生や竹の消費量が減少、また管理が行き届かない放置竹林も年々増加したことで、従来の日本の竹職人たちも減少傾向にあります。
一方で、その地で築かれた伝統を守り抜くために職人たちは力強く紡いでゆくのです。
現代の日本で多くみられる伝統的な竹の使用用途は、竹を加工し、竹ひごを編み込んで作る工芸品が主です。経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されている竹工品は7つの地域で製作されています。日本ならではの繊細さを感じる竹細工も、地域によって製作種類や編み方は異なります。それぞれを見比べてお気に入りの竹細工を見つけてみるのも面白いかもしれません。
アートにもなるハイレベルな竹細工技術
前述の通り、日本の竹細工はその繊細さと優美さが世界的に見ても高く評価されています。200以上の編み方を操り作り出される竹細工は、今や空間を彩るアートとしても使われています。
京都で活動する工芸作家が作り出すのは、竹ひごを用いて描き出す繊細な模様の竹細工。「六つ目編み」というシンプルな編み方に、糸のように細い竹ひごを刺しゅうのように細かく編み込み、花柄のデザインを生み出しています。
廃材を活用した新たな未来へ
竹の使い道は現在も進化し続けています。
処分されるはずの竹を活用し竹紙を生産する企業や、それをさらに活用し、竹紙ストローやハンガーなどの様々なアイディアを生み出す取り組みが近年活発に行われています。
同様に廃材を活用した取り組みとして、デザイン性の高い家具を製作する企業もあります。
このように従来の用途にとらわれない手法で竹は大切な資源として活用されています。
サステナブルな素材として世界から注目を集める竹材。
強度や耐久性を兼ね備えながらしなやかに曲がる竹材は建築のみならず、私たちの生活をより豊かにするために、日用品として、またアートとして、身近に多く使われています。
その竹材を活用したアイディアにまだまだ目が離せません。