文化や歴史と共存・共生する世界の学校建築

ここ数カ月で“ハノイ建設大学”や“ホーチミン建築大学”とのウェビナー開催や廃校の利活用をテーマにしたウェビナーの開催など「学校」に関連する機会を頂くことが増えていると実感しています。

これは、人が集い、そこに息づく都市を形成する上で、「学校」という存在が非常に重要な役割を担っていると言えます。教育制度の中核的な役割を果たす機関である「学校」ですが「建築」という側面から見てみると、地域の文化や歴史、慣習などと共存・共生しているとともに機能性、芸術性ともに優れた建築物であることが分かります。

そこで今回は、世界に数ある学校の中で文化や歴史との共存・共生が感じられる学校をご紹介させて頂きます。

 #1.V. ロモノソフ モスクワ国立大学/M. V. Lomonosov Moscow State University(ロシア)

 1755年世界的に有名な科学者ミハイル・モロノーソフの主導により設立されたロシア最古で最大、また世界でも有数の科学・学術センターの一つでもある大学。(モロノーソフは、ガラスづくりの技術にはじまり、物理および化学の理論構築、天文学、地理学の研究、文法書、歴史論文、頌詩の執筆、詩の翻訳、モザイク・パネルの開発を行い、かのレオナルド・ダ・ヴィンチを引き合いにだされることが多かった世界的に有名な科学者。)

本館は「スターリン建築」と言われる建築様式を採用。この建築様式の建物がロシアに7つ存在することから通称「セブンシスターズ」と呼ばれています。(その名の通りヨシフ・スターリンが独裁国家の象徴として作らせたもの。)その「セブンシスターズ」の中で最も壮大だと言われるのがモスクワ国立大学の本館です。高さは240m、32階建て、4万もの部屋があり約6,000名の収容が可能。現在は主に学生寮として使われています。因みに、230ヘクタールの広大な敷地内には校舎、学生寮のほか公園、植物園、天文台など27の主要な建物が入ります。

 

 

 

 

 

 

#2. メキシコ国立自治大学/Universidad Nacional Autónoma de México(メキシコ)

創立は1551年。1949年より60人を超える建築家や芸術家がキャンパスの設計やデザインを行い1552年に完成。アメリカ大陸で2番目、メキシコで最も古い大学です。メインキャンパス(大学都市中央キャンパス)は2007年ユネスコ世界文化遺産に登録。メキシコの伝統文化と近代建築が融合したキャンパス内には各学部や研究所だけでなく博物館、オリンピックスタジアム、スーパー、劇場、映画館などが入り大学都市が形成されています。中でも目を引くのが中央図書館(Biblioteca Central)の壁画。壁画としては世界最大級と言われ東西南北の4面全ての壁には「アステカ文明」、「スペイン植民地時代の圧政」、「太陽と月・宇宙・科学・政治」、「メキシコ国立自治大学」をテーマにしたモザイク画が描かれています。(壁画家でもあるメキシコの建築家フアン・オゴルマンの画。)1920年代に起こった壁画運動(革命の意義やメキシコ人としてのアイデンティティーを民衆に伝えることを目的に起こる)の背景を知った上でこの壁画を見ると、メキシコ独自の芸術性とメキシコ近代建築の新たな魅力を感じることができます。また、学長棟の壁にも「民衆から大学へ、大学から民衆へ」と題し立体的で迫力ある壁画が描かれています。(メキシコが誇る壁画家ダビド・アルファロ・シケイロス作。)巨大なキャンパス内には歴史的・文化的価値の高い施設や空間、ユニークな建築物など濃厚で貴重な体験ができる場所がまだまだ存在します。

 

 

 

 

 

都市を形作る上で、大変重要な役割と意味を持つ“学校”。今回、学校を“建築”という側面から見たことで、教育者、建築家、デザイナーなど実に多くの人々の熱い思いが集約され、今もなお新たな歴史を刻み続けていることを知ることができました。
廃校利活用や再生・共生もまた、今まで積み重ねてきた歴史やそこに息づく様々な思いを大切に守り、受け継ぎながら、これから先の更なる活かし方を創造することだと言えます。新たなものを生み出すことは、言い換えるならば今既にある歴史を守ることだとも言えるのではないでしょうか。

 

◆出典元
https://www.msu.ru/en/
https://www.unam.mx/
http://whc.unesco.org/es/list/1250
https://bibliotecacentral.unam.mx/index.php/nuestro-mural
https://whc.unesco.org/en/list/1250/

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