『窓から広がる創造空間』

「未来をひらく窓―Gaudí Meets 3D Printing」というデザイン展が10月15日(金)から11月3日(水・祝)まで、東京ミッドタウンにて開催されます。

こちらのデザイン展は世界的に著名な建築家アントニ・ガウディが生涯持ち続けた“共創”(各分野のエキスパートたちと試行錯誤しながら創作を行う)というものづくりの精神を継承しているクリエイティブディレクター鈴木啓太氏と住宅やビルなどに使われる窓やサッシ、シャッターなど各種商品の設計、製造、施工、販売を行うYKK AP株式会社の企画によるもの。国やジャンルを超え主旨に賛同した各分野のスペシャリストが最新3Dプリンティング技術を駆使し“未来の窓”を創造した新しい窓のプロトタイプデザイン展です。制作パートナーとしてGARDEもこの共創に参画させて頂いております。

日頃、何気なく触れている“窓”が気鋭のクリエイターたちの手によりどう表現されているのか、またどんな未来をひらくのか…大変楽しみなイベントですね。

 

YKK AP特設サイト「未来をひらく窓-Gaudí Meets 3D Printing

https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/sp/window-future/

ということでこの機会に「窓」について調べてみることにしました。

先ず、窓と言えば窓ガラスですよね。ですがこの窓ガラス、日本で一般に普及しはじめたのは明治時代後期(20世紀初頭)以降、西洋でも一般庶民が使えるようになったのは17世紀以降とのことです。外光の取り込みはもとより換気、防犯、プライバシー保護、騒音の侵入・流出の防止、害虫の侵入防止などなど窓と窓ガラスの組み合わせにより多くの機能が叶えられていることを知ると「窓」への感慨も一入ではないでしょうか。

そんな窓の役割として先に挙げた機能的な役割ともう一つ装飾的な役割が考えられます。街を歩いていてデザインが美しい窓や変わった形をした窓、綺麗に磨き上げられた窓などに遭遇するとついつい目や心が奪われてしまう…そんな経験はありませんか。

そこで今回は、特徴的な「窓」を持つ建築物や「窓」によって作り出された空間をご紹介します。

 

■トーレ・アグバール(スペイン・バルセロナ)

トーレ・アグバールはサグラダファミリアをはじめとする美しい教会など、中世の建物が多く残され、またスペインを代表する芸術家“ジョアン・ミロ”の作品を集めたミロ美術館や“パブロ・ピカソ”美術館など文化都市として多くの観光客が訪れるスペイン王国の北東部バルセロナにあるバルセロナ水道局の円筒形ビルです。外壁を覆う4,500枚のガラスのブラインドは気温センサーと連動し開閉。夏は日光を遮り、冬は日光を入れることで冷暖房エネルギーを最大限節約するように設計されており省エネによる地球温暖化対策など環境保全への取り組みにも高い意識が伺えます。ビル本体の壁は、地面近くは赤色を多く使い、地上に向かう程青色が増えるデザイン。光にきらめくガラスに覆われた炎と水がイメージカラーの美しいファサードです。ブラインドのガラスに対応した4,500個のLED照明は、コンピュータ制御により1,500を超える色を使ったイルミネーションを作り出すことが可能。季節やイベントに応じた演出も行うなどバルセロナのランドマークとなっています。

 

■ヴァルトシュピラーレ(ドイツ)

オーストリアの建築家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーが設計し彼の遺作ともなる「ヴァルトシュピラーレ」(英語で「forest spiral」日本語で「螺旋の森」)は1998年から2000年にかけて建設された12階建て、105戸が入る集合住宅です。無機質な直線が一切ない個性的なフォルムはフンデルトヴァッサー自らが敬愛する「自然」を生涯にわたって表現しようとした証と言えます。そのフォルムもさることながら、こちらの建物の特徴として窓が1000個以上もあり、更に一つとして同じ形の窓がないということが挙げられます。中には木が外に飛び出した窓などもあり、建築や窓の概念を覆した芸術性の高いデザインが随所に散りばめられています。

カラフルな壁の装飾や金色の王冠など、一見すると奇抜さばかりが目立ち童話や寓話の世界から飛び出してきたお城の様に思われがちですが頂上部にはオープンカフェとバー、中庭には小さな池や子供の遊び場を作るなど自由な感性の基、人と自然を共存させた様はまさにフンデルトヴァッサーがこの世に残した傑作と言えるのではないでしょうか。

 

■円窓 (日本)

最後にご紹介するのは日本の伝統的な窓です。無双窓(むそうまど)、櫛形窓(くしがたまど)、下地窓(したじまど)、連子窓(れんじまど)、破窓(はそう)、忘窓(わすれまど)、獅子垣窓(ししがきまど)など名称を聞いただけではピンとこない窓も多くその種類、デザインは実に多種多様です。海外の窓の様に派手で奇抜なデザインではありませんが、そこには四季の移ろいを五感で感じながら情緒豊かに生きる日本人ならではの感性が感じられます。そんな日本の伝統的な窓の中から、比較的見る機会も多い「円窓(えんそう)」をご紹介します。

円窓とは寺院、仏閣をはじめとした日本の伝統的な建築にも多く使われた円形の窓のことです。鎌倉にある「明月院(めいげついん)」や京都の「源光庵(げんこうあん)」水墨画家で禅僧でもある雪舟が作庭した庭園がある「芬陀院(ふんだいん)」などは有名で季節とともに移りかわる美しい自然の景色を円窓から見ることができます。「明月院」「源光庵」は新緑、紅葉の時期、「芬陀院」は庭の枯れ木に雪が降り積もり、その景色がまるで雪舟が描いた水墨画のよう見える雪の日が特におススメです。

日本の伝統的な「円窓」は壁で囲まれた部屋にいながら、窓を通して見える景色(借景)をも上手に室内に取り込むことで、額縁(=窓枠)でフレーミングされた絵画がそこにあるような空間演出を施していると言えます。

 

■出典元

https://www.chuko.co.jp/ebook/2013/07/513907.html

https://www.atlasobscura.com/places/waldspirale

日本の窓 (淡交ムック) ムック

https://rtrp.jp/articles/49980/

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